2020年8月6日木曜日

コラム:熱中症にご用心

この数日,急に暑くなりましたね.体調を崩されている方はいないでしょうか.メディアでもよく話題になりますが,今年はマスクを装着することが多く,例年よりも熱中症に注意が必要です. 

熱中症を予防しながら運動に励むために,どんな工夫があるでしょうか.インターネットで検索すると,高機能のウェア,首や手を冷やすグッズなど,どれも魅力的に映ります.でも,私のお薦めはもっと原始的で「涼しい時間帯に歩く」,「冷たいドリンクで水分補給」の二つです.えっ,最近,手抜きしてないかですって? とんでもありません.これが一番効果的なんです.また,お金も必要ないし,商品に目移りして時間を浪費することもありません. 

気象庁のHPにアクセスしてデータをみてみましょう.流通経大の地元龍ケ崎市を例にすると,19808月の最高気温は平均25.5℃でした.ただ,この年は少し特殊だったようで,1980年代の8月の平均最高気温は概ね2932℃といったところです.さらに2010年代は概ね3033℃と,地球温暖化の影響か30年間で約1℃上昇しています.この気温に強い日差しが加わると,いくら対策しても屋外でのウォーキングは無理ですよね.それに対し最低気温は,1980年代の8月は概ね22℃,2010年代でも2224℃です.暗い時間帯のウォーキングには別の問題がありますが,早朝など,気温が比較的低い時間帯を選んでウォーキングに励んではどうでしょうか. 

もう一つ,少し古いですが,大学野球選手が直腸温センサーを装着して練習したという研究をご紹介します.真夏に水分摂取が禁じられた状態で2時間ほど練習しますと(現在は,この様な研究は研究倫理委員会が許してくれないと思いますが‥‥),直腸温は1.8℃も上昇してしまいます.しかし,スポーツドリンク(1016℃)を自由に飲める状態で練習すると,直腸温の上昇は1.4℃に留まりました.両者の差は0.4℃と些少に感じるかもしれませんが,水を飲まなかった時の直腸温は全員39.0℃を超え,高い選手では39.9℃に達したとされています.直腸温のような身体の中心部分の温度が40℃に達すると運動の継続が不可能になるとされていますから,この0.4℃は大きな意味を持つのです.冷たい飲料で体を中から冷やすと効果的だということですね.水分補給もできますし,飲料の種類によっては汗と一緒に失われるミネラルも補給できますから,積極的な水分摂取をお勧めします.最近は,アイススラリーという氷を細かく砕いたスムージーのような飲料をアスリートの熱中症予防に活用する研究が進んでいて,商品化もされています.ただ,冷やしすぎてお腹の具合が悪くなってもいけません.また,長く続けるには味も大切です.夏のウォーキングを快適に楽しむため,自分にあったドリンクを探してみてはどうでしょうか. 

【引用・参考文献】

 寄本明, 中井誠一, 芳田哲也, 森本武利屋外における暑熱下運動時の飲水行動と体温変動の関係体力科学 44: 357364, 1995

ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

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