前回,健康づくりにおける有酸素性運動(ウォーキング・ジョギングや自転車こぎ)の目安は1回30~45分間,週3~5回だというお話しをしました.でも,ここからは重要なポイントが抜け落ちています.それは運動の「強度」です.ウォーキングの場合はスピードが上がったり上り坂を歩いたりすれば強度は上がります.エアロバイクの場合は回転スピードやペダルの重さで強度が決まりますが,回転スピードは一定にしてペダルの重さで強度を調整するのが一般的です.運動強度は低すぎると効果が少ないように思えますが,高すぎるとつらいし,第一,長い時間続けることが出来ません.一体全体,どのぐらいの強度で運動を行えばよいのでしょう.
有酸素性運動による動脈硬化度の改善に成功した過去の研究を精査し,それらをまとめた論文を,前回,ご紹介しました.そこでは,運動の時間だけでなく,強度にも言及しています.そこで引用されている研究では「最大強度の65~75%」で運動が行われていました.最大強度とは何かと言いますと「酸素摂取量が最大になる運動強度」ということです.どうでしょう,頭の中が「?」で一杯になりますよね.研究者はトレーニングを開始する前に運動負荷試験を行います.エアロバイクやトレッドミル(ランニングマシン)を使い,準備運動程度の低強度でスタートし,徐々に強度を上げて,その間の酸素摂取量を測定する試験です.その結果に基づいて「最大強度の〇〇%」に該当するウォーキング速度やペダルの重さを決定する訳です.
こんな情報を提供されても,研究所や病院で試験を受けられる人(特殊な環境にある人)以外は,どうしょうもないですよね.でも,安心して下さい.もっと簡単に「最大強度の〇〇%」を把握する方法があるのです.実は,この簡便法を使っている研究者も沢山います.次回以降,より簡便で現実的な運動強度の設定方法をご紹介します.