2020年7月9日木曜日

運動する時間がありません!(前篇)


私たちがお薦めするウォーキングは130分間,慣れた方で1回最大60分間,それを週35回です.ただし,30分間といっても,着替え,戸締り,準備運動なども必要ですから,実際には+αの時間も必要です.毎週毎週,都合よく時間をとれるとは限りませんよね.でも,30分未満のウォーキングに意味がないかというと,そうではありません.忙しい時でも効果的に運動する方法はないでしょうか.

30分の運動時間を確保できない場合,考えられる策は二つです.一つ目は,効率よく運動を行うこと,二つ目は時間を分散させることです.まずは「効率のよい運動」から考えてみましょう.以前,こんな研究が行われました.平均年齢60歳弱の女性が約3ヵ月間の有酸素性運動(エアロバイクによる自転車こぎ)にとりくみます.参加者はAB2グループに分かれており,Aグループは平均心拍数が103拍/分と弱めの運動,Bグループは同128拍/分と強めの運動です.ただし,3ヵ月間の総運動量(総エネルギー消費量)がAグループとBグループで同じになるように,1回の運動時間や1週間の実施回数が調整されました.そして,超音波検査で動脈硬化指数が測定され,トレーニング効果が検討されたのです.さて,AグループとBグループ,どちらの成果が大きかったのでしょう.

実は,AグループもBグループもめでたく動脈硬化指数が改善し,改善の程度に差はありませんでした.この研究からは,運動の強度が極端に高かったり低かったりしなければ,運動の総量(強度×時間×週あたりの実施回数)が同じなら得られる効果も同じだと考えられます.忙しくて十分な時間がとれない場合は,時間を短くするかわりに普段より少しペースを上げると良いと思います.ただし,無理は禁物です.30分間が20分間になっても,効果がゼロにはなりません.ほんの少しペースを上げれば良しということにして,できる範囲で気軽にとりくんで下さい.

【引用・参考文献】
Sugawara J, Otsuki T et al. Physical activity duration, intensity, and arterial stiffening in postmenopausal women. American Journal of Hypertension 19: 1032-1036, 2006

ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

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