健康づくり運動というと真っ先にウォーキングが頭に浮かぶ人,沢山いるんじゃないですか.それ,良いところを突いています.ウォーキングやジョギング等の「有酸素性運動」は健康・体力づくりに欠かせません.これからしばらく,有酸素性運動についてお話しましょう.
はじめに,「有酸素」の意味を考えたいと思います.有酸素性運動の対語は無酸素性運動です.有酸素,無酸素といっても,細胞内の酸素の有無のことではありません.まして,無酸素性運動は宇宙のような無酸素空間で行う運動ではありません(そんなことを連想する人はいないと思いますが‥‥).有酸素性運動とは,必要なエネルギーをつくりだす時に酸素を利用する運動のことを言います.
少し難しい話になりますが,私たちの体内にはエネルギーの元になる物質(アデノシン三リン酸[ATP]と言います)があって,それを分解して運動(筋肉の活動)に必要なエネルギーを生み出します.でも,体内にはATPはごくわずかしか貯蔵されておらず,「よーい,ドン」と運動を始めるとあっという間にATPは無くなってしまいます.どのぐらい少ないかと言いますと,全力疾走のように激しい運動では数秒でATPを使い切ってしまう程です.
では,なぜ長い時間運動を続けられるかというと,私たちの体内では,ATPを分解するのと同時に,新しいATPをつくり続けているからです.ATPを新しくつくるというと少し語弊があって,「使用済みのATPを元の状態に戻す」といった方が正確かもしれません.ATPは文字通りアデノシンに三つのリン酸が結合した物質なのですが,エネルギーを生みだす時,ATPから一つのリン酸が分離し,リン酸が三つから二つに減ってしまいます.分離したリン酸を回収してアデノシン「二リン酸」を「三リン酸」に戻すことで,再度,エネルギーを生み出せるようになるのです.有酸素性運動は,この過程(私たちはATPの再合成と言っています)で脂質を燃焼したり,酸素確保のために血液を活発に循環させたりして,私たちの体を芯から整えてくれるのです.
次回は,積極的に酸素を利用するための条件をお話しします.