2020年1月29日水曜日

体を芯から整える有酸素性運動


 健康づくり運動というと真っ先にウォーキングが頭に浮かぶ人,沢山いるんじゃないですか.それ,良いところを突いています.ウォーキングやジョギング等の「有酸素性運動」は健康・体力づくりに欠かせません.これからしばらく,有酸素性運動についてお話しましょう.

はじめに,「有酸素」の意味を考えたいと思います.有酸素性運動の対語は無酸素性運動です.有酸素,無酸素といっても,細胞内の酸素の有無のことではありません.まして,無酸素性運動は宇宙のような無酸素空間で行う運動ではありません(そんなことを連想する人はいないと思いますが‥‥).有酸素性運動とは,必要なエネルギーをつくりだす時に酸素を利用する運動のことを言います.

少し難しい話になりますが,私たちの体内にはエネルギーの元になる物質(アデノシン三リン酸[ATP]と言います)があって,それを分解して運動(筋肉の活動)に必要なエネルギーを生み出します.でも,体内にはATPはごくわずかしか貯蔵されておらず,「よーい,ドン」と運動を始めるとあっという間にATPは無くなってしまいます.どのぐらい少ないかと言いますと,全力疾走のように激しい運動では数秒でATPを使い切ってしまう程です.

では,なぜ長い時間運動を続けられるかというと,私たちの体内では,ATPを分解するのと同時に,新しいATPをつくり続けているからです.ATPを新しくつくるというと少し語弊があって,「使用済みのATPを元の状態に戻す」といった方が正確かもしれません.ATPは文字通りアデノシンに三つのリン酸が結合した物質なのですが,エネルギーを生みだす時,ATPから一つのリン酸が分離し,リン酸が三つから二つに減ってしまいます.分離したリン酸を回収してアデノシン「二リン酸」を「三リン酸」に戻すことで,再度,エネルギーを生み出せるようになるのです.有酸素性運動は,この過程(私たちはATPの再合成と言っています)で脂質を燃焼したり,酸素確保のために血液を活発に循環させたりして,私たちの体を芯から整えてくれるのです.

次回は,積極的に酸素を利用するための条件をお話しします.

2020年1月22日水曜日

必要な運動はたった3種類

 最近は健康づくり産業も競争が激しく,スポーツクラブはこぞって新しいプログラムを取り入れています.マシン・エクササイズやエアロビック・ダンスは序の口.暗闇の中で音楽や映像を楽しみながらのエクササイズや,サウナの様な暑い室内でのヨガも珍しく無くなりました.スポーツクラブで沢山の中からお気に入りのプログラムを見つけることも楽しみの一つです.でも,これら全ての運動は,今から説明する3つの運動,あるいは,それらの3つを組み合わせた運動に分類することが出来ます.基本を知っておけば,それぞれの効果を理解し,自分にぴったりのプログラムを選ぶことができるようになります.

 基本となる3種の運動とは,有酸素性運動,抵抗性運動,柔軟体操です.詳しい説明は後にするとして,大まかに言うと,ウォーキングやジョギングの様に,血液を全身に循環させて身体の隅々に酸素を行き渡らせ,脂肪を燃やして,メタボリックシンドロームや脳卒中などを予防したり,疲れにくい体質をつくったり,引き締まった体をつくったりするのが有酸素性運動,ウェイト・トレーニングの様に筋肉を鍛え,ロコモティブ・シンドロームや腰痛・膝痛を予防したり,力を強くしたり,メリハリのある体をつくったりするのが抵抗性運動,ストレッチングの様に有酸素性運動や抵抗性運動の前後に行って怪我を防いだり,疲労を回復させたり,体を柔らかくしたりするのが柔軟体操です.タバタ・プロトコルの様に,これら3つのどれとも言えない運動もありますが,まずは,これら3つを知っておけば良いでしょう.次回は,有酸素性運動の効果や実施方法について解説します.

2020年1月15日水曜日

あなたに必要な運動って?


 みなさんはどんな時に運動が必要だと感じますか? お気に入りの服をきつく感じた時,子どもや孫の運動会,階段を上る時,寝ても寝ても疲れが抜けない時,健康診断の結果を見た時...... 

 年齢を経るにつれ,運動の必要性を感じる機会が増えたのではないでしょうか.でも,ちっと待ってください.あなたに必要な「運動」って何でしょう? 生まれてから今日まで,あなたは色々な運動を経験してきたはず.子どものころなら,野球,サッカー,バレーボール,それに鉄棒,縄跳び,マット運動.季節毎の持久走大会や水泳記録会にも参加しましたよね.大人になってからは,スキー・スノーボード,スクーバダイビング,登山,ツーリングなども.スポーツクラブに通ってヨガやエアロビックダンスを楽しんだり,筋力トレーニングやウォーキング・ジョギングに励んだりしている人も多いのではないでしょうか.

 沢山の種類の中から,今のあなたに必要な運動をどうやって選べば良いのでしょう? あるいは,経験したことのない新しい運動にチャレンジするべきでしょうか? 私は,かれこれ約20年間,指導者の立場と研究者の立場を行ったり来たりしながら健康づくり運動に携わってきました.このブログでは,私がこれまでに蓄積した知識,経験,研究成果を基に,あなたが健康になれる運動について考えたいと思います.

ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

 ウォーキングは健康・体力づくりにとても良い運動だと思います.生活習慣病やメタボリック・シンドロームの予防に効果的ですし,特別な用具・技術は不要で気軽に実施できます.やわらかい日差しを受け,心地よい風を感じたり景色を楽しんだりすれば,心も軽くなりますよね.ウォーキングのイベントを...