2021年1月7日木曜日

コラム:日本人の大発見?

 2021年,謹んで新年のお祝いを申し上げます.新型コロナウィルスの感染拡大が続いていますが,皆さん,お元気のことと存じます.長らく更新を怠っていましたが,心機一転,出来る範囲で更新を続けていこうと思います.どうぞよろしくお願いします.今回は,肩のこらない軽い話題です.

 このブログは運動が健康増進に重要であることを前提にしています.令和の時代では言わずもがなですが,でも,ちょっと待って下さい.人類はいつから運動の重要性を認識していたのでしょう.社会のオートメーション化が進んで生活習慣病(昔の成人病)が増え始めたころ? 確かに,ロンドンの2階建てバスの運転手さん(座って運転)と車掌さん(車内を歩き回って切符販売)で心臓病のリスクを比較したMorrisの研究は1953,ハーバード大の卒業生を追跡して身体活動と心臓病との関連性を研究したPaffenbargerの研究は1978です.でも,学術論文と比べるのも何ですが,それらよりも遥か昔,鎌倉時代の初期に,この日本で運動の重要性が指摘されているのです.

 みなさんは鴨長明の方丈記をご存知でしょうか.「ゆく河の流れは絶えずして,しかももとの水にあらず.」で始まるこの随筆は,1212年に作成されたと言われています.全てのものは生まれては滅び,この世は絶えず変化してゆくという無常観をベースにするとされる方丈記には,以下の一節が含まれています.

「いかにいはむや、常に歩き、常に働くは、養性なるべし。なんぞいたづらに休みをらん。人を悩ます罪業なり。いかゞ他の力を借るべき。」

 これを私流に解釈すると「いつも歩いて身体を動かすと健康にいいよ.どうして無駄に休むのさ? 身体を休めると健康を損なってしまうよ.掃除でも洗濯でも,他人に頼らず,自分のことは自分でやろうじゃないの.」といったところでしょう.鴨長明のすごいところは,この時代に歩行の重要性を,そして,家事や身支度に伴う身体活動の重要性を認識していたことです.厚労省がエクササイズガイドで「生活活動(家事,肉体労働,移動のための歩行など)」の定義を示したのが2006年ですから,鴨長明の先見性,恐るべしです.

  鴨長明の子孫であり,高齢化先進国に住む私たちは,世界に先駆けて運動による健康長寿社会を実現したいですね.


【引用・参考文献】

Morris JN, Heady JA, Raffle PA, Roberts CG, Parks JW. Coronary heart-disease and physical activity of work. Lancet 265: 1111-1120, 1953

 Paffenbarger RS, Jr., Wing AL and Hyde RT. Physical activity as an index of heart attack risk in college alumni. American Journal of Epidemiology 108: 161-175, 1978

ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

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