2020年3月5日木曜日

心拍数を使ってペースを調整しよう(前篇)

 前回は,健康づくりの有酸素性運動は最大強度の6575%が適切であること,この強度を把握するには,運動負荷試験が必要であることをお話ししました.今回は,運動負荷試験を行わず,もっと簡単に運動の強度を調整する方法をご紹介します.

ウォーキングやジョギングでは速度が上がったり,坂道が急になったりすると「つらい」と感じますよね.この状態では,より多くのエネルギーが必要で,運動強度が高いと言えます.さらに速度が上がったり,さらに坂道が急になったりすると,より多くのエネルギーが必要になり,より多くの酸素を利用することになります.ただし,私たちの身体は酸素を無限に利用できるわけではありません.この限界点(酸素の利用量が最大になる運動)を最大運動,その運動の強度を最大強度と言います.ただし,私たちの身体は,酸素を利用するシステムの他に酸素を利用せずにエネルギーを生成するシステムを備えており,実際には,最大強度を超える速度で走ることもできます.ランニングで例えると,酸素の利用量は全力疾走よりも遥かに低い速度で最大になり(最大運動),それよりも速い100M走などは超最大運動と呼ばれます.つまり,全力疾走の速度と最大運動の速度は異なるので,「最大強度の〇〇%」で運動を行うためには,何らかの方法で酸素摂取量を測定または推測して,最大強度を把握する必要があります.

では,どうすれば簡便に最大強度を把握できるでしょうか.まずは,私たちの身体が,どの様にして酸素の利用量を増やすのかを考えてみましょう.脳を含め多くの組織が酸素を利用しますが,運動の強度に比例して酸素の利用量が増えるのは,筋肉で酸素の利用量が増えるからです.筋肉で酸素を利用するためには,(1)肺で血液中に酸素を取り込み,(2)肺から筋肉へ血液(酸素)を運び,(3)血液中から筋肉内への酸素を取り込み,(4)筋肉で酸素を利用してエネルギーを生成する,ことが必要です.なんだか複雑になってきましたが,ことは単純で,スポーツ現場では(2)に着目し,非常にシンプルな方法で「〇〇%最大強度」を把握しています.長くなってしまいますので,続きは次回にしましょう.

ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

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