2020年4月2日木曜日

心拍数を使ってペースを調整しよう(完結編)


 前回,心拍数を測ることで運動時の心拍出量,ひいては酸素利用量の増減を把握できることをご説明しました.心拍数をウォーキングのペース設定に利用することには,二つの実用的な利点があります.

一つ目は,測定が比較的に容易なことです.運動用の心拍数計は複数のメーカーから市販されており,マラソンやトライアスロンなどの競技者や愛好家に人気があって,ネットショップやスポーツ用品店などで購入できます.多くの機種があって目移りしますが,健康づくりに高度な機能は不要なので,信頼できるメーカーのシンプルな製品を選択するのが良いと思います.以前は胸にストラップを装着して心臓の電気活動をキャッチするタイプが主流でしたが,現在は,手首に腕時計タイプの光学センサー装着するタイプが普及し,心拍数の測定はより簡易になりました.

二つ目,実はこれが重要なのですが,運動時にどれだけ心拍数が上がるかは,年齢から予測できます.健康や体力の優劣,運動習慣の有無,性別などの影響は些少です.一般には「最大心拍数 = 220 - 年齢」という式が普及していますが,この式は高齢者の最大心拍数を過小評価しますので,私たちは「最大心拍数 = 208 -(0.7 × 年齢)[引用文献参照]」という式を使っています.以前にご説明した,1)健康づくりに最適な運動は最大強度の65 75%,2)最大強度とは酸素の利用量が最大になる強度,3)酸素の利用量は心拍数に比例する,ことを併せると,【結論】心拍数が最大心拍数の6575%になるようにペースを調整すれば良い,ということになります.例えば,69歳なら最大心拍数は「208 -(0.7 × 69)= 160」,その6575%は104120ということで,ウォーキング中に心拍数が104に満たなければペースを上げ,120を超えるようならペースを下げるという具合です.次回は,「実践編」として,私たちの運動教室での実践例をご紹介します.

【引用文献】 Tanaka H, Monahan KD, Seals DR. Age-predicted maximal heart rate revisited. Journal of American College of Cardiology 37: 153-156, 2001


ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

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