2020年5月21日木曜日

ペースを変えながら歩いててみよう(中篇)

 前回は,1)運動中は血流を促進するため血圧が上昇する,ただし,2)運動中の過剰な血圧上昇は脳卒中のリスクである,ことをお話ししました.過剰な血圧とは何か,それを防ぐにはどうすれば良いか,を考えるため,ウォーキング中に血圧がどう変化しているかを調べた研究の成果をご紹介します.

 茨城県には「ヘルスロード」というのがあって,県の保健予防課や県立健康プラザが旗振り役になり,各地にウォーキングコースを指定・整備しています.流通経大の地元龍ケ崎市もヘルスロードを整備し,「てくてくロード(健康の散歩道)」と名付け,タッポくん(龍歩くん?)というゆるキャラも誕生しました.よくできたウォーキングコースで,新日本歩く道紀行100選「食の道」にも選定されたそうです.流通経大の大学院に「スポーツ健康科学研究科」が設置された2010年に,龍ケ崎市から依頼を受けて,てくてくロードの広報を兼ねたウォーキング教室を実施することになりました.この時,ついでということでもないのですが,諸々の測定を行って研究の材料にすることにしました.

どういう研究かと言いますと,1日目に血管年齢や体力を測定し,2日目にウォーキングを行って,その間の血圧や運動強度を測定するというものです.血圧といっても,ウォーキングを中断し,座った状態で測定するのではなく,ノンストップで,歩きながら血圧を測定するのです.手首で測定するタイプの血圧計を装着したままウォーキングを行い,1km毎に自分でボタンを押して血圧を測定してもらい,ウォーキング終了後に血圧計に保存されている記録を呼び出して転記するという方法です.ただ,ウォーキング中に血圧を測定するのはナカナカ難しく,手元にあった血圧計で試してみると,多くの場合にエラー(測定結果が表示されない)が発生し,とても研究で使用できるとは思えませんでした.そこで,大型の電気屋さんに行ったり,メーカーにデモ機を送ってもらったりして,様々なメーカーの様々な血圧計を試し,研究に使えそうな血圧計を何とか見つけました.NISSEIというメーカーの製品ですが,よくよく調べると,このメーカーは多くの製品でヨーロッパ高血圧学会臨床精度試験に合格していますし,大手メーカーのOEMを請け負っている様でした.また,10年も前の話ですが,製品の詳細を聞きたくて会社に電話をしたら丁寧に対応して下さり,この製品を使って研究を行うことに決めました.さらに,実践を重ねる中でウォーキング中に血圧を測る「コツ」が分かってきて,何とか研究を実施することができました.

少し長くなりました.てくてくロードの紹介と血圧計選びの苦労話で終わってしまいましたが,続きは次回にしたいと思います.

ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

 ウォーキングは健康・体力づくりにとても良い運動だと思います.生活習慣病やメタボリック・シンドロームの予防に効果的ですし,特別な用具・技術は不要で気軽に実施できます.やわらかい日差しを受け,心地よい風を感じたり景色を楽しんだりすれば,心も軽くなりますよね.ウォーキングのイベントを...