2020年5月7日木曜日

ペースを変えながら歩いててみよう(前篇)

 これまで,心拍数計を利用したり主観的な運動強度を手掛かりにペース設定したりしてウォーキングする方法をご紹介しました.これらを読んで頂いても,他の方の文章を読んでも,ウォーキングは一定のペースを保つものだと感じられるかもしれません.しかし,必ずしもそうではないですよ,というのが今回の話題です.

 話がそれますが,皆さんは,ご自分の血圧がどの程度か,ご存知ですよね.健康診断では必ず測定しますし,家庭に血圧計があるという方も多いのではないでしょうか.その時,どんな姿勢で血圧を測りますか? 椅子に座り,安静を保って血圧を測りますよね.なぜそうするかと言いますと,体を動かすと血圧が変わってしまうからです.ウォーキングは体に良くって,歩くと血圧が下がるとお考えの方がいるかもしれませんが,必ずしもそうとは言えません.運動中,つまり,今まさにウォーキングしている時には,座って安静にしている時よりも血圧は高くなります.エネルギーを生み出すために筋肉には酸素が必要で,酸素を届けるために運動中は血液の流れが活発になります.そのために血圧の上昇が必要なのです.ただし,何事も「適度」というものがあります.運動中に血圧が上がり過ぎることには要注意です.運動負荷試験といって,トレッドミル(ルームランナーと言った方が分り易いでしょうか?)でウォーキングを行ったり,自転車エルゴメーター(いわゆるエアロバイク)で運動を行って,その間に心電図を記録したり血圧を測定したりする検査があります.その試験中に血圧が過剰に上昇する人がいて,そういう人は,例え安静時の血圧が正常でも,心臓病や脳卒中のリスクが高いとされています.一種の隠れ高血圧とでも言えば良いでしょうか.私たちの研究でも,運動時に血圧が上がりやすい人は,いわゆる血管年齢が高い傾向にありました.

 次回は,いわゆるウォーキング中に血圧がどの様に変化しているか,私たちの研究成果をご紹介して,ペースを変える意義を考えてみましょう.

【引用・参考文献】
Otsuki T, Kotato T. Blood pressure during resistance exercise is associated with 24-h ambulatory blood pressure and arterial stiffness. Journal of Physical Fitness and Sports Medicine 8: 209-216, 2019

Schultz MG, La Gerche A, Sharman JE. Blood pressure response to exercise and cardiovascular disease. Current Hypertension Report 19: 89, 2017


ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

 ウォーキングは健康・体力づくりにとても良い運動だと思います.生活習慣病やメタボリック・シンドロームの予防に効果的ですし,特別な用具・技術は不要で気軽に実施できます.やわらかい日差しを受け,心地よい風を感じたり景色を楽しんだりすれば,心も軽くなりますよね.ウォーキングのイベントを...