2020年6月4日木曜日

コラム:座りすぎていませんか?


緊急事態宣言は解除されましたが,新しい生活様式への適応が求められる今日この頃.外出がためらわれたり,テレワークが続いたりして,在宅時間が普段より長いという方が多いのではないでしょうか.家にいると,どうしても座る時間が長くなりますよね.今回は本編をお休みして「座位行動」について考えたいと思います.

スポーツ科学に携わっていると,どうしても強度の高い運動に目がいきます.高強度運動を長く行えばカロリーを多く消費できますし,何より分りやすく「運動した」と感じることができます.また,このブログでも触れていますが,健康づくり運動では中強度の運動が推奨されています.でも,よくよく考えてみますと,高強度や中強度の運動を行うのは124時間の中のほんの僅かな時間でしかありません.昨年,ラグビー日本代表の活躍に胸を躍らせた方も多いと思います.ラグビーは心身に大きな負荷のかかる激しいスポーツですが,試合時間は前後半合わせて80分間,1日の6%です.人々の行動パターンを分析した研究では,睡眠時間を除いた覚醒時間のうち,5560%は座っている時間,3540%は低強度の運動(家事や移動のための歩行など)を行っている時間だったそうです.この「座っている時間」は,近年,研究者の注目を集めており,盛んに研究が進められた結果,座位時間が長い人は生活習慣病のリスクが高いことが分かってきました.また,一日の座位時間が11時間以上の人は,推奨される運動を行ったとしても,座位時間が4時間未満の人より死亡リスクが1.4倍高いという報告もあります.これらを併せて考えると,張り切り過ぎて「昨日頑張ったから今日はのんびりするか」となるより,疲れすぎない程度の運動を週に何日も行って「毎日を活動的に過ごす」ことが望ましいように思います.以前,運動のやり過ぎは免疫機能を低下させるというお話をしましたが,それと同じですね.

どうすれば「新しい生活様式」に運動を上手く取り入れられるか,これから,よくよく考えていこうと思います.良いアイディアがあれば,ぜひご一報ください.

【引用・参考文献】
van der Ploeg HP, et al. Sitting time and all-cause mortality risk in 222497 Australian adults. Archives of Internal Medicine 172: 494-500, 2012

岡浩一朗,他.座位行動の科学:行動疫学の枠組みの応用.日本健康教育学会誌 21: 142-153, 2013

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