2021年1月30日土曜日

ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

 ウォーキングは健康・体力づくりにとても良い運動だと思います.生活習慣病やメタボリック・シンドロームの予防に効果的ですし,特別な用具・技術は不要で気軽に実施できます.やわらかい日差しを受け,心地よい風を感じたり景色を楽しんだりすれば,心も軽くなりますよね.ウォーキングのイベントを実施する時は,景色の良い場所を通過するようにコースを工夫しています. 

 そうは言っても,「飽きてしまって長続きしない」,「もっと効果的な方法を知りたい」という方もいらっしゃいますよね.今回は,ウォーキングのバリエーションをご紹介したいと思います.まずは「インターバル速歩」です.これは,信州大学の研究グループが考案されたもので,普段の歩行速度でのウォーキング(ゆっくり歩き)と速歩き(さっさか歩き)を3分毎に繰り返す歩き方です.一般的には,「ややきつい」と感じる速さのウォーキングが推奨されていますが,「さっさか歩き」では「(ややきつい)と(きつい)の中間」が推奨されています.3分間という時間限定で一般的なウォーキング以上のスピードを達成することで,生活習慣病の予防効果に加えて,いわゆるウォーキングでは改善しにくい筋力の増大も期待できるとされています.

  私たちの運動教室は,週1回のペースで合計6回(6週間)行うことが多いのですが,34回目は,このインターバル速歩を実施しています.最初の9分間はウォーミングアップとして普段と同じ速さで歩き(心拍数を3分毎に記録する都合で9分間としています),912分を「さっさか歩き」,1215分を「ゆっくり歩き」,1518分を「さっさか歩き」という具合で,3060分間歩きます.普段はペースが上がりにくい人にも,メリハリがついてペースを上げやすいようです.「スマホでラップタイムを取りながら歩くと,漫然と歩くよりもメリハリがあって楽しく歩けました。」という感想を頂いたこともあります.信州大学発,流通経大アレンジのインターバル速歩,ぜひ試してみて下さい.

2021年1月7日木曜日

コラム:日本人の大発見?

 2021年,謹んで新年のお祝いを申し上げます.新型コロナウィルスの感染拡大が続いていますが,皆さん,お元気のことと存じます.長らく更新を怠っていましたが,心機一転,出来る範囲で更新を続けていこうと思います.どうぞよろしくお願いします.今回は,肩のこらない軽い話題です.

 このブログは運動が健康増進に重要であることを前提にしています.令和の時代では言わずもがなですが,でも,ちょっと待って下さい.人類はいつから運動の重要性を認識していたのでしょう.社会のオートメーション化が進んで生活習慣病(昔の成人病)が増え始めたころ? 確かに,ロンドンの2階建てバスの運転手さん(座って運転)と車掌さん(車内を歩き回って切符販売)で心臓病のリスクを比較したMorrisの研究は1953,ハーバード大の卒業生を追跡して身体活動と心臓病との関連性を研究したPaffenbargerの研究は1978です.でも,学術論文と比べるのも何ですが,それらよりも遥か昔,鎌倉時代の初期に,この日本で運動の重要性が指摘されているのです.

 みなさんは鴨長明の方丈記をご存知でしょうか.「ゆく河の流れは絶えずして,しかももとの水にあらず.」で始まるこの随筆は,1212年に作成されたと言われています.全てのものは生まれては滅び,この世は絶えず変化してゆくという無常観をベースにするとされる方丈記には,以下の一節が含まれています.

「いかにいはむや、常に歩き、常に働くは、養性なるべし。なんぞいたづらに休みをらん。人を悩ます罪業なり。いかゞ他の力を借るべき。」

 これを私流に解釈すると「いつも歩いて身体を動かすと健康にいいよ.どうして無駄に休むのさ? 身体を休めると健康を損なってしまうよ.掃除でも洗濯でも,他人に頼らず,自分のことは自分でやろうじゃないの.」といったところでしょう.鴨長明のすごいところは,この時代に歩行の重要性を,そして,家事や身支度に伴う身体活動の重要性を認識していたことです.厚労省がエクササイズガイドで「生活活動(家事,肉体労働,移動のための歩行など)」の定義を示したのが2006年ですから,鴨長明の先見性,恐るべしです.

  鴨長明の子孫であり,高齢化先進国に住む私たちは,世界に先駆けて運動による健康長寿社会を実現したいですね.


【引用・参考文献】

Morris JN, Heady JA, Raffle PA, Roberts CG, Parks JW. Coronary heart-disease and physical activity of work. Lancet 265: 1111-1120, 1953

 Paffenbarger RS, Jr., Wing AL and Hyde RT. Physical activity as an index of heart attack risk in college alumni. American Journal of Epidemiology 108: 161-175, 1978

2020年8月6日木曜日

コラム:熱中症にご用心

この数日,急に暑くなりましたね.体調を崩されている方はいないでしょうか.メディアでもよく話題になりますが,今年はマスクを装着することが多く,例年よりも熱中症に注意が必要です. 

熱中症を予防しながら運動に励むために,どんな工夫があるでしょうか.インターネットで検索すると,高機能のウェア,首や手を冷やすグッズなど,どれも魅力的に映ります.でも,私のお薦めはもっと原始的で「涼しい時間帯に歩く」,「冷たいドリンクで水分補給」の二つです.えっ,最近,手抜きしてないかですって? とんでもありません.これが一番効果的なんです.また,お金も必要ないし,商品に目移りして時間を浪費することもありません. 

気象庁のHPにアクセスしてデータをみてみましょう.流通経大の地元龍ケ崎市を例にすると,19808月の最高気温は平均25.5℃でした.ただ,この年は少し特殊だったようで,1980年代の8月の平均最高気温は概ね2932℃といったところです.さらに2010年代は概ね3033℃と,地球温暖化の影響か30年間で約1℃上昇しています.この気温に強い日差しが加わると,いくら対策しても屋外でのウォーキングは無理ですよね.それに対し最低気温は,1980年代の8月は概ね22℃,2010年代でも2224℃です.暗い時間帯のウォーキングには別の問題がありますが,早朝など,気温が比較的低い時間帯を選んでウォーキングに励んではどうでしょうか. 

もう一つ,少し古いですが,大学野球選手が直腸温センサーを装着して練習したという研究をご紹介します.真夏に水分摂取が禁じられた状態で2時間ほど練習しますと(現在は,この様な研究は研究倫理委員会が許してくれないと思いますが‥‥),直腸温は1.8℃も上昇してしまいます.しかし,スポーツドリンク(1016℃)を自由に飲める状態で練習すると,直腸温の上昇は1.4℃に留まりました.両者の差は0.4℃と些少に感じるかもしれませんが,水を飲まなかった時の直腸温は全員39.0℃を超え,高い選手では39.9℃に達したとされています.直腸温のような身体の中心部分の温度が40℃に達すると運動の継続が不可能になるとされていますから,この0.4℃は大きな意味を持つのです.冷たい飲料で体を中から冷やすと効果的だということですね.水分補給もできますし,飲料の種類によっては汗と一緒に失われるミネラルも補給できますから,積極的な水分摂取をお勧めします.最近は,アイススラリーという氷を細かく砕いたスムージーのような飲料をアスリートの熱中症予防に活用する研究が進んでいて,商品化もされています.ただ,冷やしすぎてお腹の具合が悪くなってもいけません.また,長く続けるには味も大切です.夏のウォーキングを快適に楽しむため,自分にあったドリンクを探してみてはどうでしょうか. 

【引用・参考文献】

 寄本明, 中井誠一, 芳田哲也, 森本武利屋外における暑熱下運動時の飲水行動と体温変動の関係体力科学 44: 357364, 1995

2020年7月29日水曜日

運動する時間がありません!(完結篇)


今回のシリーズは,忙しい中で,いかに効率よく健康の増進を図るかがテーマでした.2つの方法をご紹介しましたが,他にも色々ありますので,次の機会にご紹介しようと思います.

でも,以前もお話ししたかもしれませんが,どんな内容であっても「ともかく身体を動かす」ことはとても大切です.私がお薦めしている3060分間の有酸素性運動は効果が出やすいので,過去から現在まで,多くの研究者が採用しています.でも,最近のスポーツ健康科学は研究レベルが上がってきて,測定の制度が良くなったり,より大規模の研究が実施されたりして,これまで見逃していた小さな運動効果も検出できるようになりました.いずれご紹介しようと思いますが,過去には「運動」とみなされていなかった低強度の身体活動や,もっと言うと,座った状態が長く続かないように30分毎に立ち上がることなどが健康の増進に役立つという研究成果も出てきました.厚労省は「+10(プラステン):今より10分多く体を動かそう」というキャッチフレーズで運動量の増加を促していますが,語感も良いし,的を射たグッド・フレーズだと思います.

まとめますと,ウォーキングは,1)まずは3060分間×週35回を目指す,2)時間のとれない時は,少し強度を高めて運動時間を短縮する,または,何回かに分けて運動を行い1日トータル30分間を目指す,3)それも無理な時は,ともかくできることをやる(以前ご紹介した筋力づくり運動も良いですね),そして,4)どうしようもない日は潔くあきらめる(運動できないことをストレスに感じない),ということでしょうか.無理せず,コツコツ長く運動を続けて頂きたいと思います.

2020年7月16日木曜日

運動する時間がありません!(中篇)


忙しい時は,運動時間を短くするかわりに少しだけペースを上げてみましょう,というのが前回のお話でした.でも,きつい運動はちょっと,という方もいらっしゃるでしょうから,他の方法も考えてみたいと思います.

今回とりあげるのは「運動の分割」です.まとめて30分間は無理でも,朝15分間,夕方15分間の合計30分なら何とかなる,という方もいらっしゃるのではないでしょうか.電車やバスでお勤めの方は,駅やバス停までの行き帰りで速歩きにチャレンジするのも良いですよね.今回は,福井大学 名誉教授 戎利光先生のご研究をご紹介しましょう.運動習慣のない大学生が3つのグループに分かれてジョギングに取り組みました.3グループの走行距離は同じなのですが,決められた距離をAグループは1回で,Bグループは午前と午後の2回に分けて,Cグループは午前,正午,午後の3回に分けて走ります.走るペースは3グループで同じ(最大心拍数の80%),評価項目は持久力と血中コレステロール濃度でした.さて,3グループ間に成果の違いはあったでしょうか.まず,持久力は3グループとも改善し,改善の度合いに差はありませんでした.血中コレステロール濃度は,対象者が大学生ということもありほとんど変化しませんでしたが,唯一,3回に分けてジョギングを行ったCグループのHDL(善玉)コレステロールが増加(改善)していました.なぜCグループだけでコレステロール濃度が改善したかは不明ですが,少なくとも,この研究結果から考えると,運動を分割することで効果が低減することはなさそうです.

余談ですが,今回ご紹介した研究は日本の雑誌に掲載されていますが,タイトル以外は英文で,なんと,米疾病予防管理センター(CDC)と米スポーツ医学会(ACSM)との共同声明「身体活動と公衆衛生:運動のすゝめ」(大槻訳です)に「1810分の短い運動でも,1日に何度か行って1日合計30分以上,毎日のように実施すれば健康体力が増進する」という感じで引用されています.いつか私も,こんな立派な論文を書いてみたいですね.

【引用・参考文献】
戎利光.運動持続距離の分散が心肺持久性および血液脂質に及ぼす影響.体育学研究30: 37-43, 1985
Pate RR et al. Physical activity and public health: a recommendation from the Centers for Disease Control and Prevention and the American College of Sports Medicine. The Journal of the American Medical Association 273: 402-407, 1995

2020年7月9日木曜日

運動する時間がありません!(前篇)


私たちがお薦めするウォーキングは130分間,慣れた方で1回最大60分間,それを週35回です.ただし,30分間といっても,着替え,戸締り,準備運動なども必要ですから,実際には+αの時間も必要です.毎週毎週,都合よく時間をとれるとは限りませんよね.でも,30分未満のウォーキングに意味がないかというと,そうではありません.忙しい時でも効果的に運動する方法はないでしょうか.

30分の運動時間を確保できない場合,考えられる策は二つです.一つ目は,効率よく運動を行うこと,二つ目は時間を分散させることです.まずは「効率のよい運動」から考えてみましょう.以前,こんな研究が行われました.平均年齢60歳弱の女性が約3ヵ月間の有酸素性運動(エアロバイクによる自転車こぎ)にとりくみます.参加者はAB2グループに分かれており,Aグループは平均心拍数が103拍/分と弱めの運動,Bグループは同128拍/分と強めの運動です.ただし,3ヵ月間の総運動量(総エネルギー消費量)がAグループとBグループで同じになるように,1回の運動時間や1週間の実施回数が調整されました.そして,超音波検査で動脈硬化指数が測定され,トレーニング効果が検討されたのです.さて,AグループとBグループ,どちらの成果が大きかったのでしょう.

実は,AグループもBグループもめでたく動脈硬化指数が改善し,改善の程度に差はありませんでした.この研究からは,運動の強度が極端に高かったり低かったりしなければ,運動の総量(強度×時間×週あたりの実施回数)が同じなら得られる効果も同じだと考えられます.忙しくて十分な時間がとれない場合は,時間を短くするかわりに普段より少しペースを上げると良いと思います.ただし,無理は禁物です.30分間が20分間になっても,効果がゼロにはなりません.ほんの少しペースを上げれば良しということにして,できる範囲で気軽にとりくんで下さい.

【引用・参考文献】
Sugawara J, Otsuki T et al. Physical activity duration, intensity, and arterial stiffening in postmenopausal women. American Journal of Hypertension 19: 1032-1036, 2006

2020年7月2日木曜日

ご報告:遥かな夢に向かって


突然ですが,日本人の運動実施率,どの程度だと思いますか? 厚労省の調査では,130分以上の運動を週2回以上し,それを1年以上継続している人は全体(20歳以上)で男性32%および女性26%65歳以上に限っても男性43%および女性37%です.スポーツ庁の調査では,過去1年間に週2回以上運動した人は全体(10歳以上)で男性41%および女性39%でした.これは,決して十分な割合ではありません.事情があって運動したくても出来ない方もいらっしゃることは承知していますが,私は,日本人の運動実施率が100%になることを夢見て,微力ながら教育・研究に励んでいます.

この思いは日本のスポーツ行政を担うスポーツ庁も同じで,昨年末,スポーツ実施率を向上させる事業アイディアを募るコンペが同庁主催で行われました.せっかくなので応募してみましたところ,なんと長官賞(最優秀賞相当)に選出されました.事業内容は,全国の消防署で高齢者対象の運動・防災教室を実施し,健康・体力づくりと救急救命技術の習得により,医療費の抑制と防災力の強化を同時に達成しようというものです.受賞アイディアは,スポーツ庁が事業化を検討することになっています.もし事業化されるなら私も協力したいですし,もしスポーツ庁が事業化しないのなら,私が事業化に取り組み,社会に貢献したいと考えています.

コンペの審査ですが「実現可能性」が審査基準として重要視されていました.そこでプレゼンでは運動教室の実績を大いにアピールしまして,この点が大きく評価されたのではないかと思います.ブログをお読みの方には,私たちの運動教室に参加して下さった方と,運動教室を支援して下さった龍ケ崎市の関係者もいらっしゃるかと思いますので,ここで改めて御礼申し上げます.私たちの運動教室にご参加・ご支援をいただき,ありがとうございます.皆様の健康増進に貢献できますよう,引き続き努力します.

【参考資料】
国民健康・栄養調査(H30年,厚生労働省)
スポーツの実施状況等に関する世論調査(令和元年,スポーツ庁)

2020年6月25日木曜日

歩くだけで大丈夫?(完結篇)

前回は筋力づくり運動の代表種目であるスクワットに取り組んで頂きました.あれから一週間,そろそろ慣れてきたのではないでしょうか.でも,ここからが本番です.筋力づくり運動は実に奥が深いのです.

前回は,スクワットの初級編「椅子の座り立ち運動」をご紹介しました.まずは復習です.前回と同様にスクワットを行いましょう.いきますよ「1, 2, 3, 4, 5, 6, 7」,はい,そこでストップです! 前回は,1回ごとに椅子に腰を下ろしていました.今回は,お尻が椅子に触れるか触れないかで動作を止め,次の動作(腰を上げる動作)に切りかえて下さい(中級編).これだけで随分きつくなりますよね.椅子を使わずに行うこともできますが,椅子を使う方が腰の下げ位置をきっちり決められますし,バランスを崩した時も安心です.

えっ,もっときついのに挑戦したいですって? わかりました.次は「上級編」です.中級編をしっかりマスターした人だけ挑戦して下さい.前回ご紹介した開始姿勢をとりましょう.次いで,右足は少し後ろに引いて下さい.かかとは浮いても構いません.そして,右足は軽く床につけてバランスをとる程度にどどめ,左脚一本のつもりでスクワットに挑戦してみましょう.8回できたら,左右の足・脚の役割を替えて,もう一度行います.

どうでしょう? スクワット一つでもバリエーション豊かで,「筋トレの沼」にはまってしまう人の気持ちが分かりますよね.マシンを使わない自体重の筋力づくり運動は,姿勢や力の入れ具合で,効果が大きく変わります.機会があればスポーツクラブや市町村の運動教室などに参加し,専門家の指導を受けて下さい.本当は色々な種目をご紹介したいのですが,文章だけだと限界がありますし,このあたりにしておきます.「新しい生活様式」が長く続くようだと,オンラン運動指導も考えないといけないとは思っているのですが......


2020年6月18日木曜日

歩くだけで大丈夫?(中篇)

前回はウォーキング(有酸素性運動)と筋力づくり運動(抵抗性運動)を組み合わせて実施すると良いことをお話ししました.ウォーキングはこれまで何度もとりあげていますので,今回は筋力づくり運動についてお話ししましょう.

筋力づくり運動というと何を連想しますか? 筋骨隆々のボディ・ビルダーを頭に描き,「あんなの無理」と思った人はいないでしょうか.でも,筋力づくり運動は実に多様で,皆さんにお勧めするのは,もっともっと気軽な運動です.文章でお伝えするのは難しいですが,ひとつ,今から一緒にやってみませんか.役所や何かで「すぐやる課」という感じのネーミングが話題になったことがありますが,あれと同じです.さあいきますよ!

1.体調の悪い方等は,後日,挑戦して下さい

2.椅子(タイヤの無い固定式のもの)を準備して下さい.椅子が動かないように椅子の背中を壁にぴたりとつけましょう.

3.椅子に浅く腰かけ,膝を軽く曲げて足を手前に引いて下さい.足幅は歩く時と同じか少し広めです.

4.童心に帰って,腕は「前にならえ」でお願いします.ただし,手のひらは下に向け,上半身は少し前に倒しましょう.

5.おなかに力を入れ,「1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8」と声にだして数えながら,4秒かけてゆっくり立ち上がり,4秒かけてゆっくり座って下さい.この座り立ち(8秒間)を8回くり返しましょう.

6.おめでとうございます.これであなたもチーム筋トレの仲間入りです.

どうです,簡単でしょう? これはスクワットと言って,下半身全体を鍛える筋力づくり運動の代表種目です.まずは8回×2セットを週3回,慣れたら少しずつ増やして12回×3セットを目指して下さい.

 今回は筋力づくり運動の基礎編です.次回は,応用編として,もう少し掘り下げてお話ししようと思います.


2020年6月11日木曜日

歩くだけで大丈夫?(前篇)


このブログでは,皆様の健康増進にウォーキングをお勧めしています.でも,ちまたには沢山の種類の運動があって,他の運動もやってみたいし,ウォーキングだけでは不十分な気もするし,という方もいらっしゃるのではないでしょうか.今回は,別の運動についてお話したいと思います.

以前,「有酸素性運動,抵抗性運動,柔軟体操」が健康づくりの基本種目だとお話ししました.ウォーキングは代表的な有酸素性運動で,疲れにくい身体をつくったり,心血管系の病気(脳卒中,心臓病など)や代謝系の病気(糖尿病,メタボリックシンドロームなど)を予防したりする効果があります.これさえやっておけば安心とも思えますが,実は,有酸素性運動を行うためには前提条件があります.私は大学院生の時,某市の公設運動公園にあるトレーニング室で運動指導のアルバイトをやっていました.その時に上司から「ウォーキングやジョギングは大切だけど,脚が強くないと歩くこともできないんだよ」ということを言われて,はっとさせられたことを思い出します.そうです,ウォーキングには最低限の脚力が必要ですし,脚力を高めることで膝などの痛みを予防したり軽減したりできるのです.筋力を高める運動を抵抗性運動といいます.物理的な負荷に抵抗して行うという意味で「抵抗性」と呼ばれています.皆さんには「筋力づくり運動」,「筋力トレーニング」の方が馴染み深いですよね.これらは同じ言葉だと考えてOKです.

私たちの運動教室も,以前はウォーキングに特化していましたが,近年は「ウォーキング + 筋力づくり運動」を行っています.次回,筋力トレーニングの実施方法についてお話ししようと思います.

2020年6月4日木曜日

コラム:座りすぎていませんか?


緊急事態宣言は解除されましたが,新しい生活様式への適応が求められる今日この頃.外出がためらわれたり,テレワークが続いたりして,在宅時間が普段より長いという方が多いのではないでしょうか.家にいると,どうしても座る時間が長くなりますよね.今回は本編をお休みして「座位行動」について考えたいと思います.

スポーツ科学に携わっていると,どうしても強度の高い運動に目がいきます.高強度運動を長く行えばカロリーを多く消費できますし,何より分りやすく「運動した」と感じることができます.また,このブログでも触れていますが,健康づくり運動では中強度の運動が推奨されています.でも,よくよく考えてみますと,高強度や中強度の運動を行うのは124時間の中のほんの僅かな時間でしかありません.昨年,ラグビー日本代表の活躍に胸を躍らせた方も多いと思います.ラグビーは心身に大きな負荷のかかる激しいスポーツですが,試合時間は前後半合わせて80分間,1日の6%です.人々の行動パターンを分析した研究では,睡眠時間を除いた覚醒時間のうち,5560%は座っている時間,3540%は低強度の運動(家事や移動のための歩行など)を行っている時間だったそうです.この「座っている時間」は,近年,研究者の注目を集めており,盛んに研究が進められた結果,座位時間が長い人は生活習慣病のリスクが高いことが分かってきました.また,一日の座位時間が11時間以上の人は,推奨される運動を行ったとしても,座位時間が4時間未満の人より死亡リスクが1.4倍高いという報告もあります.これらを併せて考えると,張り切り過ぎて「昨日頑張ったから今日はのんびりするか」となるより,疲れすぎない程度の運動を週に何日も行って「毎日を活動的に過ごす」ことが望ましいように思います.以前,運動のやり過ぎは免疫機能を低下させるというお話をしましたが,それと同じですね.

どうすれば「新しい生活様式」に運動を上手く取り入れられるか,これから,よくよく考えていこうと思います.良いアイディアがあれば,ぜひご一報ください.

【引用・参考文献】
van der Ploeg HP, et al. Sitting time and all-cause mortality risk in 222497 Australian adults. Archives of Internal Medicine 172: 494-500, 2012

岡浩一朗,他.座位行動の科学:行動疫学の枠組みの応用.日本健康教育学会誌 21: 142-153, 2013

2020年5月28日木曜日

ペースを変えながら歩いててみよう(完結編)


 さて,前回の続きです.龍ケ崎市の「てくてくロード(健康の散歩道)」を歩きながら1km毎に血圧を測定する実験の結果ですが,まず,安静時に比べてウォーキング中に血圧は上昇しました.健康な男女109人(平均67歳)の平均値は,スタート前の椅子に座った状態では最高血圧/最低血圧(mmHg)が12478でしたが,ウォーキング中は13779といったところです.しかし,よくデータを観察すると,奇妙なことに気が付きました.まず,同じ値がずっと続くのではなく,140/81136/79135/78と,1km地点で2kmおよび3km地点より高い値でした.一方で,客観的(加速度計による計測)にも主観的(らく,ややきつい,きつい,の三択)にも,運動強度は1km地点がそれ以降より低い値でした.原則的には,運動強度と最高血圧は比例関係にありますので,1km地点で血圧が高く運動強度は低いのは「???」なのです.

 不思議に思ってよくよく先行研究を調べてみますと,これは「downward drift」といってかなり昔から確認されていた現象で,体温や皮膚血流の上昇が原因だと考えられているようでした.そうは言っても,この現象を風や日光にさらされる屋外の運動で確認したのは私たちが初めてだったので,北欧の雑誌が論文を掲載してくれました(えっへん!). 先行研究では「運動時間が長くなると(10分を超えると)血圧が低下する」と説明されていますが,細かく見ると他にも気になるデータがあって,私たちは「準備運動が不十分だと不必要に血圧が上昇する」と解釈しています.運動時は血圧の上昇が必要な一方で,過度な上昇の反復が将来の疾病リスクを高めることには要注意です.そこで私たちの運動教室では「最初の10分間(約1km)は普段と同じ速度,それ以降は推奨速度客観的には最大心拍数の70%レベル主観的には「ややきつい」)」でウォーキングを実践しています.

正直にを申し上げると,この方法の効果を十分に検証したと言えるところまでは研究を進められていません.でも,この方法でウォーキングを6週間行うことで血管年齢などが改善したというデータは得ていますし,無理のない速度で歩きはじめるので運動にとりくみやすいという実践上のメリットもあります.ついつい最初から頑張り過ぎてしまう方,「今日はちょっと気分が乗らないな~」という日,ぜひこの方法を試して下さい.「はじめチョロチョロ,中パッパ」なんて言いますが,美味しいお米と健やかな血管は似ているかもしれませんね?!

【引用・参考文献】
Otsuki T, Ishii N. Association between blood pressure changes during self-paced outdoor walking and air temperature. Clinical Physiology and Functional Imaging 37: 155-61, 2017

Otsuki T, Nakamura F, Zempo-Miyaki A. Nitric oxide and decreases in resistance exercise blood pressure with aerobic exercise training in older individuals. Frontiers in Physiology 10: 1204, 2019

2020年5月21日木曜日

ペースを変えながら歩いててみよう(中篇)

 前回は,1)運動中は血流を促進するため血圧が上昇する,ただし,2)運動中の過剰な血圧上昇は脳卒中のリスクである,ことをお話ししました.過剰な血圧とは何か,それを防ぐにはどうすれば良いか,を考えるため,ウォーキング中に血圧がどう変化しているかを調べた研究の成果をご紹介します.

 茨城県には「ヘルスロード」というのがあって,県の保健予防課や県立健康プラザが旗振り役になり,各地にウォーキングコースを指定・整備しています.流通経大の地元龍ケ崎市もヘルスロードを整備し,「てくてくロード(健康の散歩道)」と名付け,タッポくん(龍歩くん?)というゆるキャラも誕生しました.よくできたウォーキングコースで,新日本歩く道紀行100選「食の道」にも選定されたそうです.流通経大の大学院に「スポーツ健康科学研究科」が設置された2010年に,龍ケ崎市から依頼を受けて,てくてくロードの広報を兼ねたウォーキング教室を実施することになりました.この時,ついでということでもないのですが,諸々の測定を行って研究の材料にすることにしました.

どういう研究かと言いますと,1日目に血管年齢や体力を測定し,2日目にウォーキングを行って,その間の血圧や運動強度を測定するというものです.血圧といっても,ウォーキングを中断し,座った状態で測定するのではなく,ノンストップで,歩きながら血圧を測定するのです.手首で測定するタイプの血圧計を装着したままウォーキングを行い,1km毎に自分でボタンを押して血圧を測定してもらい,ウォーキング終了後に血圧計に保存されている記録を呼び出して転記するという方法です.ただ,ウォーキング中に血圧を測定するのはナカナカ難しく,手元にあった血圧計で試してみると,多くの場合にエラー(測定結果が表示されない)が発生し,とても研究で使用できるとは思えませんでした.そこで,大型の電気屋さんに行ったり,メーカーにデモ機を送ってもらったりして,様々なメーカーの様々な血圧計を試し,研究に使えそうな血圧計を何とか見つけました.NISSEIというメーカーの製品ですが,よくよく調べると,このメーカーは多くの製品でヨーロッパ高血圧学会臨床精度試験に合格していますし,大手メーカーのOEMを請け負っている様でした.また,10年も前の話ですが,製品の詳細を聞きたくて会社に電話をしたら丁寧に対応して下さり,この製品を使って研究を行うことに決めました.さらに,実践を重ねる中でウォーキング中に血圧を測る「コツ」が分かってきて,何とか研究を実施することができました.

少し長くなりました.てくてくロードの紹介と血圧計選びの苦労話で終わってしまいましたが,続きは次回にしたいと思います.

2020年5月7日木曜日

ペースを変えながら歩いててみよう(前篇)

 これまで,心拍数計を利用したり主観的な運動強度を手掛かりにペース設定したりしてウォーキングする方法をご紹介しました.これらを読んで頂いても,他の方の文章を読んでも,ウォーキングは一定のペースを保つものだと感じられるかもしれません.しかし,必ずしもそうではないですよ,というのが今回の話題です.

 話がそれますが,皆さんは,ご自分の血圧がどの程度か,ご存知ですよね.健康診断では必ず測定しますし,家庭に血圧計があるという方も多いのではないでしょうか.その時,どんな姿勢で血圧を測りますか? 椅子に座り,安静を保って血圧を測りますよね.なぜそうするかと言いますと,体を動かすと血圧が変わってしまうからです.ウォーキングは体に良くって,歩くと血圧が下がるとお考えの方がいるかもしれませんが,必ずしもそうとは言えません.運動中,つまり,今まさにウォーキングしている時には,座って安静にしている時よりも血圧は高くなります.エネルギーを生み出すために筋肉には酸素が必要で,酸素を届けるために運動中は血液の流れが活発になります.そのために血圧の上昇が必要なのです.ただし,何事も「適度」というものがあります.運動中に血圧が上がり過ぎることには要注意です.運動負荷試験といって,トレッドミル(ルームランナーと言った方が分り易いでしょうか?)でウォーキングを行ったり,自転車エルゴメーター(いわゆるエアロバイク)で運動を行って,その間に心電図を記録したり血圧を測定したりする検査があります.その試験中に血圧が過剰に上昇する人がいて,そういう人は,例え安静時の血圧が正常でも,心臓病や脳卒中のリスクが高いとされています.一種の隠れ高血圧とでも言えば良いでしょうか.私たちの研究でも,運動時に血圧が上がりやすい人は,いわゆる血管年齢が高い傾向にありました.

 次回は,いわゆるウォーキング中に血圧がどの様に変化しているか,私たちの研究成果をご紹介して,ペースを変える意義を考えてみましょう.

【引用・参考文献】
Otsuki T, Kotato T. Blood pressure during resistance exercise is associated with 24-h ambulatory blood pressure and arterial stiffness. Journal of Physical Fitness and Sports Medicine 8: 209-216, 2019

Schultz MG, La Gerche A, Sharman JE. Blood pressure response to exercise and cardiovascular disease. Current Hypertension Report 19: 89, 2017


2020年4月30日木曜日

コラム:栄養と感染予防


 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)とは粘り強く戦い続けることになりそうです.本編をお休みして,栄養と感染予防との関係を考えたいと思います.前回のコラムでは「適度に運動をすれば風邪をひきにくくなる」,「運動をやり過ぎると風邪をひきやすくなる」というお話をしました.でも,風邪のひきやすさは運動習慣だけで決まるのではありません.食事も感染予防に重要です.

 私たちは,某大学(流通経済大学ではありません)の剣道部にお邪魔して,強化練習期間に唾液を収集するという研究を行いました.メトロノームに合わせて脱脂綿をかんでもらい,唾液を収集・分析するのです.強化練習期間は,唾液の量が減り,抗体も減っていました.細菌やウィルスにとって,唾液は人体内への侵入を妨げる物理的なバリアですし,抗体は攻撃をしかけてくる天敵です.つまり,唾液や抗体が減っているということは,感染リスクが高まった状態だと言えます.この剣道部は全国大会の常連で,普段から厳しい稽古をつんでいますが,それでも,強化練習期間にはこの様なことが起こるのです.私たちの研究以外にも,マラソン大会の後は風邪をひく人が増えるという研究など,疲労が感染リスクを高めることは良く知られています.

 実は,私たちがこの研究で調べたかったのは,疲労の影響ではなく,どうすれば疲労による免疫力の低下防げるか,ということです.そのために,学生を2班に分け,強化練習の1カ月前から,A班は偽薬を,B班はサプリメントを飲んでもらいました.試したのは各種の栄養素(アミノ酸,ビタミン,ミネラルなど)を少量ずつ,しかし多様に含んでおり「ベーシックサプリメント」,「総合栄養サプリメント」などと呼ばれるサプリメントです.この研究では,藻類の一種であるクロレラのピレノイドサ種を原料にしたものを用いました.そうしますと,偽薬を飲んだA班では唾液と抗体が減りましたが,サプリメントを飲んだB班では唾液も抗体も減りませんでした.強化練習のように疲労が著しい時にも,栄養に気を配ることで感染を予防できるということです.あるいは,疲れた時こそしっかり食べるべき,と言うべきでしょうか.

 疲労だけでなく,加齢やストレスも免疫力を下げる要素です.COVID-19が猛威をふるう今こそ,積極的に食べて,感染予防に努めたいですね.ちなみに私は,毎朝,妻子のために朝食をつくりますが,味噌汁にできるだけ多種類の食品を入れること,人参や大根は皮をむかないこと,魚は皮も食べること,果物・乳製品を欠かさないこと,を心がけてます.
 
【引用・参考文献】
Otsuki T, Shimizu K, Iemitsu M, Kono I. Chlorella intake attenuates reduced salivary SIgA secretion in kendo training camp participants. Nutrition Journal 11: 103, 2012[この研究は(株)サン・クロレラの受託研究として実施しました]

Nieman DC, Johanssen LM, Lee JW, Arabatzis K. Infectious episodes in runners before and after the Los Angeles Marathon. Journal of Sports Medicine Physical Fitness 30: 316-328, 1990

2020年4月23日木曜日

心拍数計が無いときは?(後篇)


 前回,心拍数計が無いときは,1)普段の歩行よりも速く,2)無理はしない,ことを心がけてウォーキングすれば良いと,ご説明しました.「普段より速い」は良いとして,「無理をしない」とはどういうことでしょうか.

 ウォーキングの適切なペースを説明するのによく使われるのは「ややきつい」という言葉です.私たちもの運動教室でも,この言葉を使います.また,「息が弾むけど笑顔が保てる」と表現されることもありますし,「にこにこペース」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか.どれも言い得て妙ですが,私のお勧めは「普段の歩行よりも速いけど,きつくはない」ペースです.ただ,例えば30分間のウォーキングを行うとして,ペースが変わらなくても最初の5分間と最後の5分間では感じ方が違うことを頭に入れて頂ければと思います.歩き終わった後で「今日は少しきつかったな」と感じられるのが理想で,最初から「ややきつい」だと,最後は「きつい」とか「かなりきつい」になってしまいます.オーバーペースよりは,少し物足りないぐらいの方が,続けやすいとも思います.腹八分目と言いますしね.

 ところで,「きつさの感覚は人それぞれじゃないか」とつぶやいた貴方,ちょいとお待ちを.我慢しがちな人や,必要以上につらいと感じる人がいることは,その通りです.でも今回は,できるだけ簡便なウォーキング,というテーマですから,模範回答は容赦して頂ければと思います.「普通だったらこのぐらいかな」と想像を膨らませて,大らかな気持ちで取り組んではどうでしょう.「普通の定義は?」と言うのもなしでお願いしますね!

2020年4月16日木曜日

心拍数計が無いときは?(前篇)


 何度も繰り返しますが,ウォーキング中に心拍数を測定し,心拍数が年齢から推定した最大値の6575%になるペースでウォーキングすることを,私たちはお勧めしています.でも,もっと気軽にチャレンジしたい,という需要もありますよね.そんな時はどうすれば良いでしょう.

客観的な指標(心拍数)を使えない,使いたくない時は,主観的なペース設定もOKです.この時のポイントは,1)普段の歩行よりも速く,2)無理はしない,です.人間は色々な物事に良くも悪くも慣れる生き物です.私たち運動生理学者は,ある種の活動に慣れることを「適応」と呼んでいます.皆さんの身体は普段の歩行にすっかり適応していますので,普段通りに歩いても,今よりも健康になったり,元気になったりすることは難しいのです.そういう訳で,効果を出すためには普段よりもスピードを出して心臓や筋肉を刺激することが必要なのです.

 しかし,無理は禁物です.以前,無理をすると免疫力が下がって風邪を引きやすくなることをご説明しました.また,膝や腰を痛めることも心配です.どうすれば無理をしないで済むかは,次回,お話ししましょう.

最後にもう一つ.普段通りのスピードで歩くことに意味が無いのではありません.現在の歩行は現在の健康維持に役立っているのです.普段のスピードですら歩かなくなったら,健康も体力も衰えてしまいます.COVID-19が心配な状況ですが,一人ひとりが工夫して,歩数を減らさない様にしたいですね.

2020年4月9日木曜日

運動の実践で大切なことは?


 前回は,ウォーキング中に心拍数を測定し,心拍数が年齢から推定した最大値の6575%になるようにすれば良いとお話ししました.でも,頭でわかっても行動に移るにはハードルがありますよね.みなさんが「正しいウォーキング?(好きではない言葉ですがハートが伝わり易いので,つい使ってしまいます)」をイメージできるよう,私たちの運動教室をご紹介しようと思います.今回は,運動は自分に合ったやり方で行うことが大切だという話です.

私たちの教室には,色々な方が参加して下さいます.年齢は平均65歳ですが4085歳と幅広く,男性/女性,運動習慣・持病・整形外科的障害の有/無,体力の高/低,痩身/肥満など様々です.全員に同じプログラムを提供するわけにはいきませんが,一人ひとりに別個のプログラムを提供する余力はありません(泣).そこで,運動習慣によって複数の班に分かれて頂き,A班は兎にも角にも運動習慣をつける,B班は強度を75%最大心拍数まで,回数を週5回まで段階的に増やす等,別々の目標とプログラム(時間,回数,目標心拍数)を提供します.そして,これが私たちの教室の特徴ですが,集団で歩くことはせず,参加者と学生が二人一組になり,学生が参加者の心拍数を確認しながら適切なペースで歩けるように誘導します.「皆さんのペースについていけるでしょうか?」という問合せを頂くことがありますが,私たちの教室では心配無用です.

最後に,自分に合う運動は何かということを,誤解と過去ブログとの矛盾を恐れず大胆に言いますと,自分に合う運動の第一条件は長く続けられること(飽きない,いやにならない,怪我をしない)です.ただし,楽で気軽な運動が最高だということではありません.長続きするには効果を実感することも重要ですし,やるからには元気に・健康になって欲しいと思います.自分流にアレンジするのは良いですが,やはり,運動処方の基本を押さえることは必要です.優れた指導者は効果を出せる様にサポートしてくれますし,やる気を引き出すことも得意です.新型コロナウィルスが終息したら,スポーツクラブや自治体の運動教室に参加してみて下さい.このブログも皆さんのお役に立てるように頑張ります.

2020年4月2日木曜日

心拍数を使ってペースを調整しよう(完結編)


 前回,心拍数を測ることで運動時の心拍出量,ひいては酸素利用量の増減を把握できることをご説明しました.心拍数をウォーキングのペース設定に利用することには,二つの実用的な利点があります.

一つ目は,測定が比較的に容易なことです.運動用の心拍数計は複数のメーカーから市販されており,マラソンやトライアスロンなどの競技者や愛好家に人気があって,ネットショップやスポーツ用品店などで購入できます.多くの機種があって目移りしますが,健康づくりに高度な機能は不要なので,信頼できるメーカーのシンプルな製品を選択するのが良いと思います.以前は胸にストラップを装着して心臓の電気活動をキャッチするタイプが主流でしたが,現在は,手首に腕時計タイプの光学センサー装着するタイプが普及し,心拍数の測定はより簡易になりました.

二つ目,実はこれが重要なのですが,運動時にどれだけ心拍数が上がるかは,年齢から予測できます.健康や体力の優劣,運動習慣の有無,性別などの影響は些少です.一般には「最大心拍数 = 220 - 年齢」という式が普及していますが,この式は高齢者の最大心拍数を過小評価しますので,私たちは「最大心拍数 = 208 -(0.7 × 年齢)[引用文献参照]」という式を使っています.以前にご説明した,1)健康づくりに最適な運動は最大強度の65 75%,2)最大強度とは酸素の利用量が最大になる強度,3)酸素の利用量は心拍数に比例する,ことを併せると,【結論】心拍数が最大心拍数の6575%になるようにペースを調整すれば良い,ということになります.例えば,69歳なら最大心拍数は「208 -(0.7 × 69)= 160」,その6575%は104120ということで,ウォーキング中に心拍数が104に満たなければペースを上げ,120を超えるようならペースを下げるという具合です.次回は,「実践編」として,私たちの運動教室での実践例をご紹介します.

【引用文献】 Tanaka H, Monahan KD, Seals DR. Age-predicted maximal heart rate revisited. Journal of American College of Cardiology 37: 153-156, 2001


2020年3月26日木曜日

コラム:運動と感染予防

 新型コロナウィルス感染症(COVID-19)が世間を騒がせていますが,皆様,いかがお過ごしでしょうか.今回は,本編をお休みして,運動と感染症との関係を考えたいと思います.運動習慣のある人は風邪を「ひきにくい」でしょうか「ひきやすい」でしょうか.これは研究者にとっても気になるところで,「運動免疫学」という研究分野があって,この問題を専門に研究する方も沢山いらっしゃいます.早速答えを言いますと「適度に運動をすれば風邪をひきにくくなる」と言えます.視点を変えると「運動をやり過ぎると風邪をひきやすくなる」とも言えます.
 
 唾液には抗体が含まれていて,病原菌やウィルスが口から侵入するのを防いでくれます.唾液の量と成分を調べて,抗体の分泌量が多ければ免疫力が強い(感染しにくい)と言えるわけです.以前に行った実験では,高齢者が週5回の運動を6カ月間行うと,抗体の分泌量が増えました.運動は自転車こぎと筋力づくり体操で,合わせて11時間程度です.もう一つ,以前に行った実験ですが,日常的に歩数の多い人と少ない人を比べてみると(平均年齢71歳),歩数の多い人の方が抗体の分泌量が多い傾向にありました.少ない人の歩数は14200歩以下,多い人は160007700歩でした.これらの結果を見ますと,やはり,「運動習慣のある人は風邪をひきにくい」と言って良いと思います.ところが,この研究には続きがあって,歩数が大変多い高齢者(17700歩以上,平均1万歩)と歩数が少ない人との間には,はっきりとした差はありませんでした.また,(若いスポーツ選手の実験ですが),強化合宿のようにきつい練習をすると一時的に抗体の分泌量が減るというデータがあったり,他の研究グループからも似たような研究成果が報告されていたりして,運動をやり過ぎると,効果が出なかったり,逆に風邪をひきやすくなったりするようです.

 「適度な運動」を定義するのはナカナカ難しいですが,無理をせず,疲れが残らない程度に運動して,良く食べ,良くねることが大切だと思います.専門者会議の言う「換気の悪い密閉空間,多くの人が密集」を避けられる屋外でのウォーキングはお薦めです.

【引用文献】
Otsuki T, Shimizu K, Iemitsu M, Kono I. Chlorella intake attenuates reduced salivary SIgA secretion in kendo training camp participants. Nutrition Journal 11: 103, 2012

Shimizu K, Kimura F, Akimoto T, Akama T, Otsuki T, et al. Effects of exercise, age and gender on salivary secretory immunoglobulin A in elderly individuals. Exercise Immunology Review 13: 55-66, 2007

Shimizu K, Kimura F, Akimoto T, Akama T, Kuno S, Kono I. Effect of free-living daily physical activity on salivary secretory IgA in elderly. Medicine and Science in Sports and Exercise 39: 593-598, 2007

ウォーキングに飽きてしまったら?(前篇)

 ウォーキングは健康・体力づくりにとても良い運動だと思います.生活習慣病やメタボリック・シンドロームの予防に効果的ですし,特別な用具・技術は不要で気軽に実施できます.やわらかい日差しを受け,心地よい風を感じたり景色を楽しんだりすれば,心も軽くなりますよね.ウォーキングのイベントを...